国土交通省「平成31年度 空き地対策の推進に向けた先進事例構築モデル調査事業」

事業の目的

対象地域である裳掛地区(裳掛小学校区)は瀬戸内市の東端に位置し、果樹を中心とした農村部と、牡蠣養殖を主とした漁村部から成る。平安時代より空海や平家の来訪が多かったこと、中世以降は池田藩の筆頭家老がいたことなどから、歴史的に栄えてきた地域でありながら、現在では市中心部から最も遠いこともあり、市内でも特に過疎、高齢化が進む地域となっている(2019年3月度:人口2,043人、高齢化率51.1%)。

このような現状から、地域活力の維持に向けて、2012年からの7年間に渡り、地域協議会(裳掛地区コミュニティ協議会)を中心にむらおこし活動を行い、空き家整備20軒、移住者を受入16世帯、農地復元3ha超などの成果を上げている。その過程において地域では、利用可能な状況にある家、土地といった資源の活用についてはノウハウを蓄積しているが、対象は減っている。今後の活性化活動において、より条件の悪い資源の活用について取組を行う必要があり、そのための調査、実証実験が求められる。

以上を踏まえ、事業の主たる目的は、市内にある空き地、遊休地のうち、活用に際しての悪条件が多い対象空き地について、管理・活用方法を探り、知見を得た上で、後に市内の同様な空き地の活用を促す際に役立てるものである。特に、権利関係について複数者が関与することから、活用時の合意形成を含め、地域による取組という点を重視する。

事業内容

①地権者調査

・対象となる空き地の地権者リスト(26名)を作成し、集落の行政委員の協力のもと、地権者への連絡を行い、土地の利用についての意向確認を実施。

②対象空き地の整地(地権者の承諾を得た空き地が対象)

・草刈り、水路の探索と復元を通じて、空き地の整地を行った。

③乾地の活用を検討するワークショップの実施

・整地した土地のうち、地表が乾地化し、地権者の承諾が得られる土地について活用方法を検討するワークショップを実施。

成果

 地権者調査により、各筆の実質的な管理者の把握ができ、対象空き地の92.9%にあたる262平米について、調査(調査に必要な整地含む)に対する承諾が得られた。

 対象空き地の整地により、雑草等に覆われて把握ができなかった空き地及び空き地周辺の状況や歴史的経緯を把握することができ、乾地化と活用を目指す対象地を定めることができた。一部の対象地については乾地化に向けた調査の一環として盛り土(30~50㎝程度)を実施した。

 乾地の活用を検討するワークショップは、地域住民と岡山大学まちづくり研究会のメンバーなど50名弱が参加し、それぞれの立場から活用の方向性について意見交換が行われ、外部へも売れる作物の栽培、農作業体験、子ども向けイベント(例:「青空」読み聞かせ)、水生植物の栽培等、様々なアイデアが共有された。また、意見交換後には活用方法の検討の一環として映画上映会を行った。

 中長期的な展望として、本調査の知見を活かして、遊休地の情報提供(瀬戸内市空き地バンク)や瀬戸内市移住交流促進協議会による利活用できる遊休地の確保等の検討を進めていく。

事業費

事業費総額1,603,076円(うち補助金額1,603,076円)